【新人看護師】多重課題を乗り越えよう!時間管理の考え方とポイント

多重課題・タイムマネジメントに悩む新人さんへ

看護師は常に多重課題に追われています。患者さんの部屋を担当するようになり、最初にぶつかる壁がタイムマネジメントではないでしょうか。うまく管理できるようになるには時間がかかります。そこまでが本当にきつい。体力的にも精神的にも。しかし、1日をうまく乗り越えたときの達成感は大きく、タイムマネジメントが上手になると、余裕が出てきて楽しく看護ができるようになります。少しでも早く看護の楽しさを知ってほしいので、日々しんどくなっているであろう新人さん向けに、タイムマネジメントのコツをまとめてみました。

私は脳外病棟がメインだったので、脳外の新人さん向けになってます。

タイムマネジメントとは

タイムマネジメント=時間管理ですね。看護師にとってのタイムマネジメントは、「効率的でより質の高い看護を提供するための時間管理」だと思っています。勤務時間内に業務を終わらせるのはもちろん大事ですが、看護の質を落として定時で帰るのでは、看護師としての責務を果たせたとは言えず、何より自分の達成感もありません。患者さんも自分も満足して一日を終えるために、タイムマネジメントの練習をしていきましょう!

基本的には、緊急度・重要度で優先順位を判断します。

優先順位①緊急度が高く、重要度が高い
・今すぐ命に関わるもの
(心停止、呼吸不全他、興奮して自傷他害の危険性が高いなど)
優先順位②緊急度が低く、重要度が高い・今すぐ生命に関わることではないが、患者さんの治療が滞る、健康状態に悪影響があるもの
(厳密な時間管理が必要のない点滴や内服、時間があるときに連絡してほしいと言われていたこととか、ルーチンで行っている体位交換とか)
優先順位③緊急度が高く、重要度が低い
・時間の制約があり、命に危険が及ばないもの
(認知機能に問題のない患者さんのトイレ介助、リモコンを拾ってほしいなど)
優先順位④緊急度が低く、重要度が低い
・時間の制約がなく、命に危険が及ばないもの
(普段の記録、備品の整理など)
注意したいのは、重要度が低くても、必要であるということ

優先順位で迷うのは②③の多重課題だと思います。迷ったときは、自分の力量やその業務に必要な所要時間も重要な判断材料になります。

情報収集・ワークシートの整理方法

情報収集

①基本的な情報を確認・患者さんの名前・年齢・疾患・背景・既往歴・治療の段階など
②看護記録から患者さんが気にしていることを確認(いわゆるS情報)・鎮痛剤が効かない、1人で食事ができるようになるのか心配など
③看護師が気にしていることや引き継ぐべきことを確認(O情報やアセスメント)・夜寝れていなそう、昨日シャワーの予定だったけど入れなかったなど
④今日の予定を確認
*点滴や内服の内容も確認しておくとなおよい
・治療・検査・リハビリ・他科受診・病状説明や介護認定調査など
⑤今日必要な看護ケアを確認・シャワー介助、清拭、オムツ交換、食事介助、手術オリエンテーションなど
情報収集:②~⑤は順不同でOK

ワークシートの作り方

集めた情報は簡潔にメモをとり、一日の行動計画を立てます。ワークシートなどがあると便利です。自分で作成するときには、原本にあらかじめルーチン業務(申し送り・VS測定・配薬など)を記入しておきましょう。そうすることで、病棟全体の流れがわかりやすくなります。また、原本のワークシートをもとに、その日のやることを追加するだけで良いので、毎日決まっている業務を記入する手間も省けます。

①ルーチン業務を整理する
病棟全体で決まっているスケジュール
(申し送り、カンファレンス、定時の点滴交換やオムツ交換など)

②時間指定のあるやるべきことを整理する
時間指定のある点滴や内服・検査・リハビリなど

③時間指定のないやるべきことを整理する
清潔ケア・環境整備・褥瘡処置・医師の処置介助・記録など

③のスケジュールの組み方のコツは、その業務にどのくらいの時間が必要なのか考えることです。自分がその業務を遂行するために、何分かかるのかを把握しておく必要があります。初めての処置や、どのくらいの時間を見積もったら良いかわからないときは、先輩に相談しましょう。時間に余裕があるタイミングがわからず、「手が空いた時に○○しよう」と考えることがあるかもしれません。気持ちはわかりますが、看護師の業務は、計画せず時間に余裕ができることはまずあり得ません。暫定で良いので、やるべきことはスケジュールに組み込んでおきましょう。
また、時間が決まっていない検査の予定など、自分でコントロールすることが困難なものもありますね。そのようなものは、おおよその時間(この検査はいつも午前中には呼ばれるなど)が決まっていることがあるので、わかる範囲で予想して計画を立てましょう。

病棟の流れを把握するために、先輩が何時に何をしているか、シャドーイングの時などに観察しておくと良いです。(朝の配薬は何時までに終わらせているとか)

ワークシート作成のコツ

ワークシートは、自分が使いやすく作れていれば何でも良いのですが、タイムマネジメントを意識するという面からいうと、担当患者さん全員のスケジュールを一目で把握できるものが望ましいです。例えば、患者さん毎にワークシートを作成すると、頭の中でスケジュール表を組み合わせなくてはならないので、多重課題を把握しにくくなります。業務に慣れてくると、病棟の流れが体にしみつくので、頭の中でスケジュールを立てて、修正して、というのができるようになりますが、慣れない初めの頃は、なるべく1枚に収めるのが良いでしょう。参考として例をあげておきますね。

参考1
参考2

試行錯誤して、自分が使いやすいワークシートを作ってみてください。ただ、最終的な目標は、ワークシートを作ることではなく、「上手にタイムマネジメントできるようになること」というのを忘れないでくださいね。

多重課題の対処方法

情報を整理したワークシートをもとに多重課題を抽出します

ワークシート上で重なっている部分が多重課題にあたります。予測できている多重課題は、あらかじめ調整しましょう。例えば、明らかに検査とリハビリが重なりそうだというときには、あらかじめ連絡をして時間をずらしてもらったり、今日はこの時間しかシャワーに入る時間がないという状況であれば、患者さんと調整するときに、その時間で了承してもらえるように工夫をしたり、ケア業務のスタッフがいれば事前に介助をお願いしておいたり…そのような根回しをしておくのです。
アプローチした結果、調整がつかなかった、緊急入院がくることになったなど、自分でコントロールできない・予測できない多重課題に関しては、もうその都度対応していくしかありません。その時になるべく余裕を持って対応できるように、予測できる多重課題は解決しておくのが大切です。

自分なりに優先順位の根拠を持ちましょう

優先順位というのは、その時の状況によって大きく変わります。同じ多重課題だとしても、新人さんが対応するときにbestな優先順位と、その課題に慣れた先輩が対応するときにbestな優先順位は異なるのです。なぜ、自分がその判断をしたのかを常に意識しておくことで、自分自身も振り返りがしやすく、先輩からも適格なアドバイスをもらえるようになります。

「どうしてそうしたの?」と聞かれたときに、緊張して言葉にできなくなることもあると思いますが、「○○だと思ったからこれをしたんだよな」というのが自分の中にあるだけで、次回どうしたらよいか見えてくるはずです。

メモをとり、見返す習慣をつけましょう

看護師の業務は盛りだくさんな上に、一日の中で予定がコロコロ変わります。そして作業も遮られることが多々あります。患者さんの家族と電話をしている最中に新しい指示を渡されたり、患者さんと話しているときに隣の患者さんに用事を言われたり。なので、こまめにメモを取りましょう。そして見返す習慣をつけましょう。忙しいとメモを見返すことを忘れ、夕方になって、「わ!あれ、やってない!」と焦ることになります。10時頃には一度メモやワークシートを見返す、などマイルールを決めておくのもおすすめです。

周囲に頼る

多重課題は、一人ではどうにもならないこともあります。そのような状況では、必ず周囲に協力を仰ぎましょう。そして、周囲に頼るにも技術が必要です。

1.自分にしかできないこと
2.誰に頼むのか
3.どこまで頼むのか

このあたりを明確にしましょう。自分にしかできないことを把握していないと、業務が整理されず、他スタッフに依頼できるものがなにかわからなくなります。逆に言えば、自分にしかできないこと以外は頼める、ということですね。しかし、依頼するにしても、先輩に頼むのか、同期に依頼しても大丈夫か、はたまた看護師でなくても良い業務なのか、そのあたりの見極めも必要になります。ほかにも、搬送をお願いするなら、移乗からお願いするのか、搬送だけお願いするのかなども考えましょう。細かいようですが、こういった準備をすることで、自分の頭の中が整理されます。しかし、パニックで何もわからない状況であれば、誰かに今自分は困っているということを伝えられるだけで十分です。

誰にも相談できず、自分も対処できず…というのが最悪パターン。その被害を被るのは患者さんなのです。

後回しにしない

業務が重なったときには優先順位をつけますね。そこで優先順位の最下位になるのが、緊急度も重要度も低い業務(書類関係とか記録とかかな)です。一日の中に時間の余裕はありませんが、隙間時間はできたりします。患者さんに「ちょっとここで待ってて」と言われたり、電話対応中の保留が思ったより長い時などです。そんなときは、時間を無駄にせず、一人だけでもVSを入力しようとか、ワゴンを整理しようとか小さな業務を片付けていきたいところです。1分1秒を争っている時でなければ、物品の補充や患者さんの洗濯物の回収など、ちょっとしたことはコツコツ終わらせていきましょう。小さなことを後回しにすると、未来の自分の首が絞まります。

一緒に考えてみましょう(実践編)

基本の優先順位をつけ方は、タイムマネジメントのところでお伝えした通りですが、実際は、あんなにわかりやすい多重業務はないですよね。死にそうな人と、トイレ介助が同時のタイミングであったら、人命救助が最優先だとわかるでしょう。普段の業務で困るのは、ナースコールが重なったり、先輩に頼まれたことと優先順位の低い業務が重なったりそういうことではないでしょうか。少し一緒に考えてみましょう。

例:

Aさん脳梗塞後でリハビリ転院待ち
ADLは車いす1人軽介助レベル、認知機能は△、センサーを使用
Bさん痙攣重責後で重度の意識障害がある
ADLは全介助で意思疎通は×
Cさん手術前で病状は安定しており、ADLも自立している
薬のみ看護師で管理中
Dさん・Eさん退院間近

◇あなたは日勤で、5人の患者さんを担当しています。朝の配薬の途中でAさんのセンサーが鳴り、Bさんが定期予定のCTに呼ばれ、Cさんからナースコールがありました。配薬はDさんとEさんの2人のみ終えています。
◇あなたならどのように対処しますか?
◇ゆっくり整理してみましょう

Aさんのセンサーは何故作動したのでしょうか

・トイレに行こうとしたのか、TVの位置を変えようとしたのかもしれません。
・介助が必要なADLであるため、一人で動くと転倒や転落につながる可能性があります。また、認知機能が低下していることから、自分で転倒予防行動をとったり、ナースコールを使用して看護師に介助依頼するのが難しい可能性が高いですね。
・配薬に行っていないため、今日のAさんの状況は確認できておらず、情報が不足しています。

Aさんの緊急度と重要度はどうでしょうか

・センサーが作動しているということは、Aさんはすでに何か行動を起こしている状態のため緊急度は高いといえます。また、転倒などの事故予防が必要と予想されます。情報が不足していますが、安全面を考慮して重要度も高いと考えておきます。

Bさんが検査に行くためにはストレッチャーでの搬送が必要ですね

・Bさん自身は検査に呼ばれていることを知らないので、時間には追われていませんが、検査室はBさんのために準備をしているでしょう。医師も早く検査結果をいりたがっているかもしれません。搬送するには移乗の準備が必要で、検査中には他の患者さんの対応ができなくなることも考慮する必要があります。Bさんの配薬もまだでしたね。

Bさんの緊急度と重要度はどうでしょうか

・すでに検査に呼ばれてはいますが、検査室も搬送の時間が必要であることは理解しているでしょう。緊急で入った検査ではないため、緊急度はまずまず(高くも低くもない)、重要度は高いと考えました。

Cさんのナースコールの要件はなんでしょう

・配薬が来なくて不安に思っているのかも、体調がすぐれないのかも、手術のことで聞きたいことや何か頼み事があるのかも・・・と、色々想像できますね。

Cさんの緊急度と優先度はどうでしょうか

・病状が安定している術前であり、急変は考えにくいため緊急度は低そう。要件がわからないので重要度はそこそこ、としておきます。

整理しましょう

・Aさんは、すぐに見に行かないと安全が危うい→優先順位①
・Bさんは、急ぎはしないが、対応にはそれなりの時間が必要→優先順位②or③
・Cさんは、緊急ではなさそうだが、重要度がわからない→優先順位②or③
つまり、まずはAさんの対応を行い、Cさんに要件を聞いて重要度を判断するという流れが良いかなと思います。Cさんの要件の重要度がわかったら、先にBさんの対応をするかCさんの対応をするか決められます。

この多重課題を避けるためには何ができたでしょうか

ここで大切なのが、優先順位を付けたときに自分なりの根拠です。
Aさんはそもそもなぜセンサーを使用しているのでしょうか。センサーはどのようなモードで設置されていて、Aさんはどのようなときに動くことが多いのでしょう。そのような情報を知るためにも、早めに訪室して確認しておくと良いでしょう。自分が他の患者さんのラウンドをしている間に、Aさんが危険を冒さなくて済むように、トイレに誘導したり、ベッド周囲の環境を整えたりできたかもしれません。
Bさんの場合は、配薬の途中にCT検査に呼ばれる可能性があると予想して、早めに回って、あらかじめ移乗の準備をしたり、搬送の依頼を済ませておけるとよかったですね。そうすれば、検査に呼ばれても準備の時間が短縮されて、他の多重課題を避けることができます。
Cさんに関しては、AさんとBさんの多重課題が整理されていれば、Cさんからナースコールがあったとしても問題なくすぐに対応できたでしょう。

イメージがついたでしょうか?優先順位をつけるためには情報収集が不可欠です。

【まとめ】多重課題を乗り越えるためのタイムマネジメントのポイント

多重課題を乗り越えるために

・情報収集は正確に行う
・患者さんの基本情報・時間でやること・時間指定のないやることで整理し、ワークシートやメモを有効活用する

タイムマネジメントのポイント

・予測できるものは事前に対処する
・優先順位の根拠を明確にする
・記憶力だけに頼らず、メモを取る・見返す習慣をつける
・周囲に頼る
・隙間時間を無駄にしない

適切なタイムマネジメントは新人さんでなくても難しいものです。それでも毎日トライ&エラーを繰り返すことで、自分の働きやすい方法がみつかっていきます。日々の振り返りの時に、「次はこうやってみようかな」と、前向きに考え、楽しい看護師ライフを送りましょう!

多重課題に悩んでいる看護師さんの助けになれたら嬉しいです。

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